『誕生日12月20日』日番谷サイド

今日一護のやつから『プレゼントだ』と言われて、小振りのきれいに包装された箱を手渡された。

(そういえば今日はオレの誕生日か…)

あんまり長く生きていると(死神だが)誕生日なんてものはどうでも良くなるものだが、初めて貰う一護からの贈り物は正直うれしくて、少しくすぐったい。
包装紙を破ろうとして、すぐ目の前で一護がじっとこちらを見ているのに気づき、オレはなれない手つきで黄色と水色の模様の包装紙を丁寧に開けた。
リボンもちゃんとほどいて纏めた。
箱はこれまたきれいな青で、小さな花柄が金色で刺繍されていた。
一護にはあまりに似合わないその箱に思わず吹き出しそうになったが、オレの手元を見つめている目があまりに真剣だったので、ぐっとこらえた。
箱の中には変な形のペンダントが一つ入っていた。

『なんだこれ?随分といびつな形だな?』
『いいから!いつもつけててくれよ?』
『わ…わかった…』

ものすごい剣幕で言われ、正直(なんでこんなもの着けなきゃならねーんだよ…)
と思いながらも頷いた。
ペンダントはヘンテコな形はしていたが、シルバーのトップに同じ銀色の細いチェーンがついていて、男のオレが着けていても、まぁおかしくはないだろう。
普段こんなものは一切着けないが、せっかく一護がくれたものだから、しばらくは着けていてやるつもりだった。
なのにオレの口からは、

『もっと役に立つものだったらよかったのに』

とか

『食いもんが良かった』

とかなぜか余計な言葉しか出てこない。
まぁケーキの箱がすぐそこにおいてあるから食いもんはクリアか。
ちらりとケーキが入っているであろう大きな箱を見ると、

『ケーキはちゃんと買ってあるって!でもそっちのペンダントがメインだかんな!』

子供にいい聞かせられるように言われてしまった。
全く何度言っても一護にはオレが子供に思えるらしく、憤慨極まりない。
だが、他の奴らに子供扱いされるのと違って、一護のはなんだか…落ち着くような…安心するような感じがして、オレもついつい甘えてしまうことが多かった。

二人で大きくカットされたフルーツが所狭しと盛られたケーキを食って、風呂にはいることにした。
ふとももがさっき落としてしまったケーキのクリームで気持ち悪かったし……。

ゆっくり風呂に浸かって、全身きれいになると自然と大きく息をついてしまった。
腹もいっぱいになったし、なんだか眠くなってくる。
うとうとしかけたら、

『こら!こんなとこで寝るな!』

と一護に頭を小突かれた。
普段ならお返しに蹴りの一つや二つ入れているところだが、今日はやめておいた。
とても気分がいいから…。
しっかり体も温まり、のぼせる前に風呂から上がって着替える。

タオルで髪をがしがし拭きながら一護がオレの方を振り返り、

『先に上行ってろよ オレ飲みもん持って行くから』
『あぁ…わかった』

オレも髪を拭きながら答え、髪を乾かすのも面倒なので、そのまま先に一護の部屋に戻っていることにした。

『ふー…』

ベッドに腰掛けて足をぶらつかせながら、ふと一護の机に小さな箱があるのが見えた。
綺麗な青。
金色の刺繍。
オレにくれた物と同じ箱。
オレは吸い寄せられるように箱に近づいてじっと眺めた。
自分のは風呂に入る前に中身を出して、箱はオレの荷物と一緒に纏めて置いてある。
振り返って確認したが、やはり服と一緒に青い箱が見える。
視線を一護の机に戻す。

『……』

なんだか無性に気になってしまって、悪いとは思ったが、中身がどうしても見たくなり素早く箱の蓋を開けた。

『……あれ?これ……』

自分の首からさがったペンダントを手に取って眺める。
風呂上がりにちゃんと着けたのだ。
次に一護のと思われる箱の中身、これもペンダントなんだが、それも眺める。
じぃっと見つめるほどに確信が強まり、何度も自分のペンダントと見比べた。

(これって…)

そっと一護のペンダント手に取り、自分のに近づけてみた。

『あ…』

くっつけた二つのペンダントは、一つではあんなにいびつとしか見えなかったのに、重ねてみるとちゃんとハートの形になった…。
一護のペンダントは大きなハートの真ん中が複雑なジグソーパズルのような形にぽっかり穴があいていて、その複雑な穴の形そのまんまが、オレの首からさがっていた。
あまりにオレはペンダントに集中していたせいで、一護が部屋に戻ったのに気がつかなかった。
慌てたようにそばに寄ってくる。

『あ!冬獅郎!見ちまったのか…』
『いちご…』

マグカップを二つ持った一護が背後から、気まずそうにこちらを見て言う。

『せっかくの恋人の誕生日だんだし、なんかお揃いのもんにしたくてさ…でも冬獅郎割れたハートの形とか嫌がりそうだったし、全く同じもんてものなんか…な…
んで、それだったら冬獅郎のは何の形だかわかんねーしフツーに着けれそうだと
思ってさ…』
『……』

こいつなりに足んない頭働かせて選んでくれたらしい。
オレはなんだかすごく恥ずかしくなって何も言えなくなってしまった。
いつもの調子で何か言ってやりたかったのに、言葉も出なくて、ひたすらオレは床を見つめた。
そんなオレの様子に一護が心配そうに声をかけてくる。

『冬獅郎?やっぱ嫌だったか?』

見上げると一護が申し訳なさそうな顔をして、オレを見下ろしていた。

『ちがう…』

またオレの心配ばかりする。
いつもそうだ。
どんなわがままいっても。
どんなに不機嫌になっても。
ケンカしても。
遠くにいても近くでじゃれあってても。
いつもいつもオレの心配ばかりする一護。

それは一護の性格なのだろうが。そんなにオレは頼りなく見えるのか、そんなに気難しく感じているのかとたまに本気で思う。
実際自分でも気分屋で我が儘だとは思うが…。

プレゼントが気に食わなかったのかと心配する一護に取りあえず否定はしたものの、次の言葉が綱柄なくて、またオレはうつむいてしまった。
必死に頭を働かせ、何か言葉はないかと探すが、こんなときに限って何も浮かばない。
しばらく沈黙したあとに、おrは今の素直な気持ちだけを伝えることにした。

『ありがと…一護…』

何を言っても何をしても、一護はオレのことを一番に考えてくれて、オレはそれに甘えてばっかりで。
いろいろ言いたいことはあるんだろうけど、この大事なときに使えない脳みそはうまい言葉を作り出してはくれなかった。
そのかわり、いつもの3倍くらい心臓が働いているようで、一護にこの早すぎる鼓動が聞こえてしまうのでは…と恥ずかしくなって、思わず背を向けそうになったが、
今日はケンカもしたくないし、一護にこれ以上心配もさせたくない。
せっかくオレの…こんなオレのために誕生日を…こいびととして祝ってくれたのだから。

マグカップを机にそっと置きながら、オレの顔を覗き込む一護。
ふわりと暖かいココアの香りがした。
じっとオレの目を見つめて、オレの頼りない厚さの肩を優しく掴んだ一護が口を開いた。

『冬獅郎、誕生日おめでとう』

って何歳だか知らねえけど…なんて困ったように笑う一護が、すごくすごく大切に見えた。
その瞬間オレの中で何かが弾けた。

『いちご!』

自分でもびっくりするくらいの勢いで一護に飛びつき、背中に手を回して渾身の力を込めた。
一瞬一護の体がぐらついたが、オレの軽い体重はすんなり一護に抱きとめられた。
自分の行動に驚いて、顔を上げることが出来ず、一護の胸に真っ赤になった頬を押し付けていると、一護の大きなあったかい手が、オレの頭や背中や肩をゆっくり優しく優しく撫でていく。

『冬獅郎…』

と、とんでもなく優しく心地よい音が聞こえた。

そして、すでに耳まで真っ赤になっているであろう一護の胸に埋めていた顔をそっと離された。
恥ずかしさのあまりもう一度頬を押し付けようとすると、両手で頬をつかまれ、阻止された。
抗議するように見上げると、一護の顔が近づいてきてふらっと額にキスされた。

オレは何も言うことが出来ず、抵抗もせずにそれを受け入れた。
ふわりと笑った一護が、次に瞼に、頬に、鼻の頭に、顎にキスをして行く。
そしてゆっくりと離れ、『冬獅郎…』とオレの名前をささやくと、ぎゅっと噛み締めてしまっていたオレの唇にこれまでで一番優しくて、熱いキスが落とされた。

いつの間にかオレの腕は一護の背中に再び回されていて、ぼうっとする頭で

(このまま時が止まればいいのに…)

なんて馬鹿げたことを考えていた。