『噴水』(一護、高校生。冬獅郎、小学生)

北風がかなり冷たくなってきた。
でも天気は良かったので、普段あんまり外で遊ばせてもらえない冬獅郎を外にだしてやろうと、オレは冬獅郎が寒くないように厚着させて近所の公園に連れて行った。
昼過ぎの柔らかい日差しが気持ちいい。

『どっか行きたいとこあるか?』

オレは冬獅郎の顔を覗き込んで聞いてみた。

『公園。』
『また噴水見たいのか』

何度も行っている公園なのだが、そこにある大きな噴水を眺めるのが冬獅郎は好きだ。
夏の間は涼しげで、オレもだいぶ癒されていたのだが、こうも寒いと癒されるどころか、風邪を引いてしまいかねない。
だが、既に冬獅郎の足は公園にむかっていて、オレは軽くため息をつきながら少し前を歩く小さな身体を見つめた。
冬獅郎が風邪を引かないように気をつけなければ。

こいつは自分が虚弱だということを絶対に認めないので、いつもムリをしては風邪をひいて、こじらせて大変なことになる。
その度に看病するオレに謝りながらも、健康管理については正す気が全くないらしい。

お気に入りの噴水が良く見えるベンチに並んで座る。
形を変えながら勢いよく吹き上げる水しぶきを食い入るように見つめる冬獅郎。
しばらくはオレも一緒に見ていたが、さすがに飽きてポケットから文庫本を出して
読み始めた。
集中しなくて済むように、雑学的な小ネタを集めた本だ。

しばらくして、ふと冬獅郎をみると、まだ飽きもせずじっと吹き出す水を眺めている。

(もう何時間ながめてるんだか…)

冬獅郎の手には『寒いから』って公園に入る前に買ってやった
もう冷めて久しいココア。

『そろそろ帰るぞ?冬獅郎』
『あ…うん』

ほぼ同時に噴水が止まる。
夕方になると自動で止まる仕組みのようだ。
すっかり冷えてしまったココアを飲み干し、冬獅郎は立ち上がってきちんとゴミ箱に缶を捨てに行った。
オレも座りっぱなしで痛くなった身体を伸ばし、冬獅郎と並んで家路につく。
相当大気も冷えてきていて、少々急ぎ足で帰りを急いだのだが、
案の定、家に着いたときには冬獅郎の鼻が
ぐずぐず言い出しやがった。

やっちまったかな…とオレは心の中でかなり後悔した。

無理矢理でも早くつれて帰ればよかった

冬獅郎をせかして風呂に入れ、早々に飯を食わせる
少し残したけど食欲はあるみたいだ。少し安心した。

……と思ったのもつかの間。

夜中トイレに起きたオレの隣に置かれたベッドで
少し乱れた息が聞こえた

(あちゃ?!熱だしやがった!)

慌てて冬獅郎の額に手を当てる。
思ったよりは上がってない熱。
ホットため息をつきながらオレは下へおり、冷えピタを
冷蔵庫から出して部屋へ戻る。
冬獅郎の前髪を後ろへなで付け、よく冷えたジェル状のシートを
貼って様子を見ることにした。

しばらく冬獅郎の枕元に座って頭をなでていたが、さすがにオレも寒くなって
自分のベッドから毛布を引っ張りだし、身体の巻き付けて一回り小さなベッドの脇に座る。

小さな冬獅郎の手を握って、すぐにオレもそのまま寝入ってしまった。

ふと近くでなにかが動く気配を感じてオレは目を覚ました。

『ん…あ…あ!冬獅郎は』
『いちご…起きた?』
『あ…あぁごめん、オレこのまま寝ちゃって…ってお前…具合は?』
『んー…平気』

ぼーっとした顔でなんとか答えてくるがまだ熱がありそうだ。
額に貼っていたシートは寝ている間にはがれたのか、起きて自分ではがしたのか、ベッドの脇の棚に丸められて置かれていた。
オレはそのすっかりぬるくなったシートをゴミ箱に捨て、新しいシートを冬獅郎の
額に貼った。

『冬獅郎、飯は?』
『いらない…』
『そっか……なんか飲むか?』
『うん』

ジュース飲ませて、薬も飲ませて、また寝かしておこう。

冬獅郎は午前中はずっと眠っていたのだが、
夕方になって、寝てるのも飽きてきたのかベッドから起きだして、
タオルケットを引きずりながらふらふらリビングにおりてきた。

オレは冬獅郎の邪魔にならないように、リビングに宿題一式を持ってきて
やっていた。
冬獅郎が降りてきたので、少し何か食べさせようとしたが、
冬獅郎は

『いらない』

と一言言って、ソファにのぼり、頭からタオルケット巻き付けて
テレビをぼーっと見ている。
日曜なので、くだらないバラエティーの再放送や、スポーツ系の番組しかやっていない。
しばらくつまんなそうに画面を眺めていたが、
冬獅郎の好きなアニメのDVDをつけてやると少し顔が明るくなった
真剣に画面を見つめる冬獅郎がたまんなくかわいい

目の周りがほのかに赤くなってるから、まだ熱があるんだろうに
食い入るようにテレビを観ていて、本人は熱があることすら
忘れてしまっているようだ。
そろそろまた寝かせないと、このままでは晩飯も食ってもらえなくなる。
終わった宿題のノートを閉じながら、

『冬獅郎!ほらもうテレビばっか観てないで寝なきゃだろ!』
『うぁ!消すなよ!観てんだから…』

リモコンでテレビ消してやると
ぷーっと頬を膨らませてにらんでくる。
そんな顔も熱のせいで迫力がない。

『だめだ!治ったらだ!』
『なんだよ!えらそーに!』
『病人は病人らしくしてろ』
『ちぇ…』

ふてくされてソファに寝転がる冬獅郎。
額に手を当ててみると朝よりは下がったみたいだ。
気持ち良さそうにオレの手に額を擦り付けてくる。
その可愛い仕草に、相手が病人だということをオレは一瞬忘れそうになった。

『熱少しさがったな?なんか食うか?』
『アイス』
『わかった ちょっと待ってろよ』
『ん』

冷凍庫から冬獅郎の好きなアイスを出してきてやる。
こいつはチョコとかイチゴとか甘いばっかのアイスが好物だ。
棚から小さめのスプーンを出して、ソファでアイスを待ってる子供の元へ
運んでやる。

『ほれ』

そのままアイスとスプーンを渡そうとすると

『あー』

と可愛く口を開けた。

『…自分で食えよ』
『じゃあいらない』

(こいつ…この…やろう…)

『びょーにんはびょーにんらしくっていちごが言った』
『ったく…ほら口開けろ』

全く余計な頭の働く奴だ。
アイスの蓋を開けて、スプーンをぐさっと刺す。
しょーがないから食わせてやることにした。

『あーん…うめぇ…』
『ほれ』

冷たくて美味しいのか、次々と口を開けてねだってくる。
あぁ…可愛いな…ほんとに…。
初めは身を乗り出して、アイスを食っていた冬獅郎だったが、
半分ほど食べたところで寒くなったのか体を丸めて、タオルケットを
かぶり直した。

『寒くなったか 上いくか?』
『やだ ここでいい』
『じゃあ毛布も持ってきてやるよ』
『いらない』
『だって寒いんだろ?』
『いーの!』
『すぐ戻るから』
『……っ』

ぎゅっとオレの服をつかんでくる小さな手。
びっくりして冬獅郎の顔を見ると、熱でいるんだ瞳を揺らせながら、
少し寂しそうにオレを見上げてくる。

ああ どうしてこんなに可愛い行動をとるんだろうな
毛布を持ってこなきゃと思いつつも、
可愛い冬獅郎の行動にオレの動きは止まってしまった。

『まったく…お前は…』

くしゃりと頭をなでて、ソファに座ったオレを見て冬獅郎は
少し嬉しそうな、満足そうな顔をする。

『じゃあここでいいから横になるんだぞ?』
『うん』

すこしでも寒くないようにとありったけのクッションを周りにしいて、
冬獅郎の身体を横にしてやる。
一番大きなクッションを頭の下に敷いて、少しタオルケットから
はみ出していた足をしまってやった。
冷蔵庫にまだ冷やしてある熱さましのシートを持ってきて、

『もういらないって…』
『まだ貼っとけ、嫌なら上に行くぞ?』
『わかったよ…』
『よし!いい子』

冷たいシートを貼ると、冷たさに冬獅郎は首を竦ませる。
頬を優しくなでてやると、冬獅郎はオレの手を軽く握ってきた。
そのままオレの手を抱き込むように抱え、目をつぶる。

オレにここにいろと言いたいらしい。
しょうがないな…とため息をつきつつ、腕をそのまま冬獅郎に貸してやる。

しばらくすれば眠るだろ
そしたらベッドにつれてくか…

そんなことを考えていたらオレまで眠くなってきた。
こんなとこで寝たら確実に冬獅郎の風邪をもらってしまうのに。
ダメだ…と思いながらも、体はゆっくりソファに沈んでく。

 

 

続きでチビの風邪をしっかりもらってしまった一護の看病をする子供を
書きたかったのだけど、世の中風邪ネタが氾濫していてwww