『一護の独り言』



なんだか、冬獅郎はドーナツがやたら好きなようだ。
何が食いたいかと聞くと、8割方ドーナツがいいと答える。

別にどこそこのドーナツじゃなきゃ嫌だとか言うのは無いらしいので、それこそコンビニのパンコーナーのドーナツでも、嬉しそうに食う。
だからオレは、あいつが来た時には出来るだけドーナツを用意しておくし、オレが尸魂界に行くときも持って行くようにしている。

ドーナツを見ると、子供らしく目を輝かせるのが本当に可愛らしい。
ほとんど表情は変えないが、オレには分かる……ってのは、あいつの恋人だからという自惚れだろうか…。

そして冬獅郎はよく食べる。
といっても一度に胃袋に入る量は少ないので、その分食べる回数が多い。
だから、ドーナツも一度に1つか2つで十分だ。
だから、色々な種類を買ってやるとどれを食べようか迷っているし、1つ食べ終わっても次のに手を出すかどうかで困っている。

そんな姿も萌……いや、かわいい。

冬獅郎が昨日オレのうちに来た。
ちょうど昼飯時だったので、二人で駅前のドーナツ屋に行く事にした。

いつもの通り、冬獅郎はあれやこれと品物を選んで、あとはオレに任せさっさと席を探しに行ってしまう。
窓際のカウンター席で頬杖をついて外を見ている。

レジで会計する時に、オレは冬獅郎の選んだドーナツと、それとかぶらないようにした自分の分のドーナツを全てハーフカットしてもらうように頼んだ。
こうすれば、1つ分で2種類、2つ分で4種類。
我ながら良い案だと思って、店員にカットしてもらったドーナツと飲み物を持って冬獅郎の元へ急いだ。

お待ちかねの大好物を目の前に置いてやった瞬間、冬獅郎の顔が急に不機嫌になった。
どうしたのかと聞いてみると、何で切ってあるのかと逆に質問された。
冬獅郎がいつも1つ2つで腹いっぱいになるから、色々食えるように切ったのだと答えると、余計な事をするなと怒鳴られた。

あっけにとられているオレに、冬獅郎はいらないと言ってジュースだけをすすっている。
ものすごい不機嫌だ。

理由が分からずに、とりあえず席に座った俺は、もう一度冬獅郎に食べるかどうか聞いてみたが、やはりいらないと言われた。
仕方なく、一人で食べる事にしたオレだったが、半分に切った事で口に入れやすく、次々とドーナツを胃におさめていった。

ふと気がつくと、ちらちらとこちらを伺う冬獅郎に気づいた。
やっぱり腹が減っているのだろう。

一つ差し出すと、しぶしぶと言った感じでチョコレートドーナツをかじり始めた。
あっという間に食べ終え、次は抹茶ドーナツを手に取る。

なんだ…食うんじゃん…。
なんて思いつつ、二人で綺麗に平らげた。

外に出て、家に向かいながら、冬獅郎にさっきはなぜあんなに怒ったのかをもう一度聞いてみた。

すると冬獅郎はしばらく黙っていたが、恥ずかしそうにうつむきながら、小さな声で理由を教えてくれた。
ぼそぼそととぎれとぎれに話してくれたが、要約すると

『ドーナツの丸い形が好きで、あのままの形にかじりつくのが好きなのだ』

ということらしい。

……とんでもなく子供らしい答えだった。
あまりにも可愛い理由に、オレは思わず吹き出してしまった。

思いっきり殴られた。

そういうことなら…と、オレは冬獅郎の手を引き、先程のドーナツ屋にもどった。

もう食えないという冬獅郎に、晩ご飯もコレにしようと言うと、素直に応じてくれた。
遊子には怒られそうな食事メニューだが、あとはウィダーでも飲んでおけばいいやということにした。

たくさんのドーナツを持っての帰り道。

盗み見た冬獅郎の顔は、少しはにかんだ様な微笑んでいるような顔で、オレはにやけるのを押さえるので精一杯だった。

その後、夜になって、丸い形のままのドーナツを、口の周りをチョコやら砂糖まみれにしながら頬張る冬獅郎は、とても幸せそうだった。

その冬獅郎の姿を見れるオレは、きっともっともっと幸せ者だ……。