『オレの初恋2』



現世に戻り、普通に近い生活に戻ったオレは、もう彼には二度と会えないと思っていた。
死神代行とはいえ、仕事のほとんどは現世の虚退治だし、オレはなんといっても一般の高校生だ。
ただ、頭の中には常に彼がいた。
なんども忘れようとした。
あの時、あんなに彼に興味を示したのだって、本当に小さくて、小さいのに隊長で、それに強くて、見た目が他のやつと違ってきれいな色で出来ているからだと思った。
『好き』とかそんな感情とは結びつかないと決めつけていた。
オレにはロリコン趣味もないし、ホモでもない。
いたってノーマルだ。

でも、数日たっても忘れることは出来なかった。
むしろ、彼のことを考える時間は増すばかりだった。

傷は治っただろうか。
ちゃんとメシは食っているだろうか。
休んでいる間にたまった仕事は片付いたのだろうか。
いくら隊長でも、体は子供なのだからちゃんと寝ないと倒れてしまうんじゃないか。
また眉を寄せて怒っているのだろうか。
オレには見せてくれなかった笑顔は、今は誰かに見せているのだろうか…。

考えれば考えるほど胸にもやもやしたものが溜まり、誰に対してなのかはわからない嫉妬の様なものがわき上がって来る。
友人には『最近の一護はよりいっそう顔が恐い』とまでいわれる始末。

もっと話がしたい。
会って話がしたい。
いろんな所へ遊びに行きたい。

オレは今まで持ったことの無かった感情に戸惑っていた。
この感情をどうしていいかわからずに日々過ごしていた。
他にやらなければならない事は山ほどあるし、もう会えないとわかっている彼の事を考えてばかりではオレの人生建設的には進められない。
忘れられないのは仕方が無い。
だが、他にやるべき事はしっかりやらねばと小さく決意をした。

だが、そんなある日
突然彼はやって来た。
愉快な仲間たちとともに。
小さな体に似合わない俺と同じ制服を着て。
腕組みをしてオレを見上げる瞳はやはりとてもきれいだった。
その姿を見たオレは一瞬声も出なかった。
情けないことに、涙が出そうになるのをこらえていた気がする。
ただただ驚いた。
だけど、とんでもなく嬉しかった。
体が震えた。

これまでオレは、自分はふつーの高校生だと思っていた。
ロリ趣味でもショタ趣味でもない。
いたってノーマル趣味の。

でも例外もあるみたいだ。
オレはホモではないはずだ。
だが、男が好きな訳ではなく、彼だけが好きなのだからきっとホモではない。

日番谷冬獅郎というちょっと変わった死神が好きになってしまった、ちょっと変わった高校生というところ。
そう決めた。そうに違いない。

そんなことがあってから、今みたいに冬獅郎と付き合えるようになるまでは大変だった。
オレの想像以上に照れ屋で不器用だった冬獅郎。
ことに恋愛に関しての臆病っぷりにも驚いた。
ま、オレもそんなに器用な人間でもないが。

そして、ゆっくりゆっくり進めてきた関係。
関係が深まるごとに、彼はオレに対してわがままになる。
それがとてもうれしかった。
あの冬獅郎がわがままを言ってくるのは、自慢じゃないがオレだけだという自信はある。
相変わらず気分屋で怒りっぽくて、気難しい冬獅郎だけど、オレにとってはとても大切な恋人。
わがままを言った後、少しだけ反省している様が本当に愛らしいのだ。

だが、彼のあまりの扱いの難しさに、めげそうになったこともあったけど、そんな不安は一瞬で吹き飛んだ事件があった。

その日は冬獅郎がうちに泊まりに来ていた。
そしてなんとかかんとか同じ布団で一緒に寝てくれることを了承してくれた日。
ただし背中合わせという約束で。

寝相の悪い冬獅郎は、夜中に足や腕を振り回したり投出しながら寝る。
今までは違う布団…というか、冬獅郎がオレのベッドでオレは床に布団をしいて寝ていた。
それでもわかるほど冬獅郎の寝相は悪い。
良く床に布団が落ちていたこともあるし。

その日は背中合わせで寝ていたにも関わらず、眠りに入ってすぐに冬獅郎のすばらしい膝蹴りがオレの脇腹に入ってきた。
驚いて起きたオレの目に移った信じられない光景。
オレの服をきゅっとつかんだ冬獅郎の小さな手。
寝相が悪いせいで吹っ飛ばしたらしい布団が体の上に無くて寒いのか、全身をオレの体にすり寄せている。
額を強くオレの肩に押し付けて、すやすやと寝息をたてていた。

天使に見えた。
それは大げさだと言うかもしれないが、そんな冬獅郎の姿を見たことの無いやつに、どれだけ説明してもあの可愛さはわかってもらえないだろう。
もちろんわかってもらうつもりもないが。

そんなオレの天使が今日家に来る。
秋だから栗が食べたいと言っていた彼のために、甘栗をバケツ盛りで用意してある。
オレの部屋はもう甘い匂いが充満している。
この部屋に入ったらきっと彼は言うだろう。
『甘ったるくて気持ちわりぃ…』と。
眉間から皺が消えたとてもうれしそうな顔で。