『幼稚園児のお正月1』

ママとパパがお仕事で海外に行くことの多い冬獅郎
しょっちゅう一護の家に預けられる

幼稚園の先生をしている一護は実家の近所にアパート暮らし
すぐ隣が冬獅郎のお家(かなりでかい)

実家で暮らしてもいいのだけど家は病院で忙しくしてることが多いし
アパート暮らしの方が気楽でいい

それに人見知りの冬獅郎は実家に連れてってもなかなか打解けられず
一護の後ろに隠れてそわそわしているので可哀想だ

妹達も父親も冬獅郎をかまいたがるが、それが冬獅郎にはどうやら少し迷惑
らしい
ただ以前と比べるとだいぶ慣れてきたようで
興味のあるおもちゃなんかを出されると妹達に囲まれて遊んだり
一護の父親が差し出すおやつを美味しそうに食べたりしている

だから今年の正月は実家でみんなで過ごすことにした

大晦日にばたばた海外へ飛んで行ってしまった冬獅郎の父母を見送り
そのまま一護の実家へ向かう

『冬獅郎?今日だけは夜更かししてもいいんだぞ?』
『え?ほんとか?』
『あぁ特別な 今年が終わって来年になる瞬間だぞ?』
『らいねん…?』

よくわかってないみたいだけど 夜更かしは嬉しいらしい

『夜…お腹すくか?』
『あー…年越しそばってのがあってな?』
『うん』
『それ食えば大丈夫だ』
『ふうん…おそば…?』

おやつじゃないのが残念らしい

実家に帰ると妹達と父親がうるさいくらいの出迎えをしてくれた

『おにいちゃん!おかえりなさい!』
『いちにい!遅いよ!遊子がせっかくケーキ焼いたのに!』
『お!冬獅郎くん!今日から家に泊まるんだろ?おじさんと寝ようか?』

『こらこらこらこらうるせえな!ってか親父バカなこと抜かすな!この変態!』

(こんな可愛い冬獅郎をクソ親父になんか渡してたまるかってんだ)

そっと下を伺うと 予想通り一護の足にしがみついて回りを伺っている
もういい加減慣れても良さそうなもんだが 
まぁ ほいほい誰にでもついて行かれるよりはよっぽどいい

ひときわ目立つ容姿の冬獅郎だから 結構危ない目で観てるやつが多そうで
最近怖いのだ

『さ!おにいちゃん冬獅郎くん早く入りなよ!ケーキ切るから!』
『おう!サンキュー遊子!ほら行こうぜ冬獅郎!』
『…うん…』

相変わらず動こうとしないので一護がしゃがんで靴を脱がせ
家にあげてやる
夏梨が冬獅郎に『おいで』と手を差し出す
その手をじっと見て 一護を振り返る
すこうし不安そうな顔

『オレ部屋に荷物おいてくっから夏梨に連れてってもらえ?』
『…ん…』
『冬獅郎!行こう!』

とてとてと夏梨に手を引かれリビングへ向かう後ろ姿を確認してから
一護は2階に上がって荷物を置いた
部屋には既に冬獅郎用のベッドが用意されていて
あったかそうな布団一式が乗っかっていた

『どーせ使わねえかもだけどな…』

いくら他に布団を用意しても絶対に一護としか寝てくれず
そこがまたとんでもなく可愛いので困るのだ
一護の胸に埋まるようにしてすやすや寝る姿から目が離せず
一護は何度も寝不足に陥った

『おにーちゃーん!』
『あぁ!今行く!』

急いで下に降りると既にテーブルには切り分けたケーキと紅茶
冬獅郎にはジュースが用意できていた

おとなしく…というかどうしていいか分からずに仕方なくおとなしくしているであろう冬獅郎はテーブルの端を両手でつかみ一護の方を『早く来い』という目でみている

一護はそんな冬獅郎に軽く苦笑しつつ隣へ座る

『さ!おやつタイムだよ!』
『いただきまーす』
『冬獅郎くんたくさん食べるんだよ!』

おやつを食べ終わった冬獅郎はきょろきょろと辺りを見渡し

『なぁいちご いつらいねんになるんだ?』
『まだだなー あと8時間くらいあるからな』
『どれくらい?なんふん?』
『んーと…冬獅郎がいっつも寝てる時間よりは短いな?』
『わかんねえ!』

ぷーっと頬を膨らませる冬獅郎
すごい可愛い

ふと一護は思い立ち

『冬獅郎 すこし昼寝するか?』
『いい』
『夜更かしすんだろ?夜眠くなって寝ちゃったら来年になるとき冬獅郎寝てたーってなっちゃうぞ?』
『……』
『こたつで一緒に寝よう?晩飯までさ』
『こたつ…!』

冬獅郎の家にはこたつがない
一護のアパートにもない
一護の実家は冬になると当たり前のようにこたつをだすのだが
冬獅郎には珍しく それを結構楽しみにしているらしい

『じゃ おしっこしてこい』
『いちごも…』
『はいはい』

トイレをすませ 二人してクッションをかき集めてこたつに横になる

『あったけー』
『あったけーな』
『こたつー』
『気持ち悪くなったら言うんだぞ?冬獅郎』
『なんないもん』

やけどなんてしないようにこたつの温度を最小まで下げて

大晦日のテレビを観ながら冬獅郎が寝るのを待つ一護
待つまでもなく冬獅郎はすぐにうとうとしてきた
一護は冬獅郎の頭をなでながら軽く額にキスをした

すぐにすーすーと気持ちの良さそうな寝息が聞こえてきて
その寝息が一護の子守唄になって
二人でしばしの睡眠
一護の妹達や父親が代わる代わる覗き込んでは
『いちにいの顔だらしねー』
『冬獅郎くんほんっとかわいいね』
『あぁもーどうして一護にしかなついてくれないんだ!』
『親父がキモイからだろ』
『え!あたしもキモイのかな?かりんちゃん!』
『ばか!遊子はキモくなんかないぞ!』

楽しそうだった