『幼稚園児のお正月2』

『おにいちゃん!冬獅郎くん!ご飯だよ!』
『はやく食べないとなくなっちゃうからな!』

『んぁ…ふあぁー…もう夜か…』

思いのほかぐっすり寝てしまったらしい
起き上がって隣を見ると暑くなってしまったのか冬獅郎は
お腹をぺろんと出して
履いていたはずのフリースのズボンは蹴り飛ばして脱いでしまったらしい…
こたつの中でくしゃくしゃになっていた

『あーあ 冬獅郎…風邪ひくぞ…』

まだすやすや眠りこけている冬獅郎をこたつから引っ張りだす

『お前…パンツまで脱ぎやがったのか…』

はぁノとため息をついてオレはこたつの中から冬獅郎のパンツとズボンを探し出す
冬獅郎を抱きかかえパンツとズボンを履かせる
冬獅郎は全く起きる気配もなくオレの腕にしがみついてよだれを垂らしている

『おい…起きろ!冬獅郎!』

脇に手を入れて冬獅郎を立たせ可愛いおでこにオレの額を軽くぶつける

『ふぁ…あ…?いち…ご…』

一瞬目を開けてオレを見てオレの名前を呼んで…また瞼が落ちて行く

『ああ!こらこら冬獅郎!ほら!ご飯だぞ?今日はお前の好きな……おい!遊子!
今日飯なんだ?』
『湯豆腐だよ!後でおそばも食べるし 明日からもたくさん食べるから軽くしたよ』
『ほら!冬獅郎!とーふだぞ!お前好きだろ?』
『とーふ?』

やれやれ…起こすだけで一苦労だ…

『寒い!』

こたつから出してリビングの椅子に座らせたが今の今までこたつで寝ていたので
冷えてしまったらしい
寒そうに小さい足を丸めている

『ちょっと待ってろよ』
『どこいくんだよ!いちご』
『こないだゴジラのスリッパ買っただろ?あれ履こうな』
『あ!うん!』

小さい冬獅郎の足にふかふかのスリッパを履かせると
嬉しそうに足をぷらぷらさせて どうやらご機嫌だ

冬獅郎にやけどさせないように晩ご飯を食べさせる
豆腐は『甘くないプリン』だと思い込ませてからは冬獅郎は豆腐がお気に入りだ

オレが夕食の片付けの手伝いをしようと立ち上がると
一瞬不安そうに冬獅郎がオレを見る

『皿洗ってくっから お前は夏梨と遊んでもらっててくれな?』
『おれもあらう!』
『いいよ お前じゃ届かないだろ?』
『てつだう』
『んー じゃこれを遊子のとこに持ってってくれ 落とすなよ?』
『おとすもんか!』

比較的小さな器を数枚重ねて持たせてやる
冬獅郎は手元だけを見て歩いているのでよたよたあぶなっかしい 
オレと遊子は固唾をのんで見守ったが なんとか冬獅郎は使命を果たした

『さら もってきた』
『ありがとう!冬獅郎くん』
『……あ…ぅん…』

褒められてちょっと照れているらしい
普段はオレにおこられてばっかりだからな

とてとて走ってオレの元へ飛んでくる

『冬獅郎ありがとな じゃあオレがこれ終わったら風呂な?』
『はやく!』
『へいへい』

さっき昼寝させたからやたら元気だ

こたつに入りたいらしい冬獅郎は ちょっと遠巻きにうろうろしながら
こたつを見ている
夏梨と親父が先にこたつに入ってしまっていて 行きづらいみたいだ
二人ともテレビに観入っていて気づかない
そんな姿も可愛かったが ちょっと可哀想なので
抱っこしてこたつへ入れてやる

『あったけー』

同じ感想しか出ないらしい
さっさと手伝いを終わらせて冬獅郎を風呂に入れないとあのまま
また寝てしまいそうだ

『冬獅郎!風呂入んぞ!』
『…ぅあ…?』

やっぱりうとうとしてやがったノ
こたつにあご乗っけて目が半分閉じていた

『ああこら!一護!起こすなよ!冬獅郎くんが可哀想じゃないか!』
可愛かったのに…とぶつぶt続ける親父をにらみつつ
冬獅郎を抱っこする
湯たんぽみたいにあったかくなってた

『さむ……』
『はやく入ろうぜ』

先を競うように浴室に入り お湯加減を確認して手桶で冬獅郎にお湯をかけてやる

『あちー』
『熱かったか?今シャワー出すからな』

冬獅郎が家に来るようになってから 冬獅郎が転んでも怪我しないように妹達が小さいときまで使っていたお風呂マットをまた出した 
オレのアパートにも買わなきゃな…

冬獅郎は椅子に座ったオレの膝に後ろ向きに乗っかってシャワーから出るお湯を手のひらで受けてははじいて遊んでいる

『こら このままじゃ洗えないだろ?ちゃんと立って!』
『いやだ』
『とーしろー…』

すこし低い声を出して冬獅郎の脇腹をくすぐってやる

『うぁっ!やだ!やめろー』
『いうこと聞かないからだぞ』

すかさず冬獅郎を立たせてオレの方を向かせる

スポンジにボディシャンプーをつけて泡立たせると 今度は泡に興味が移る
泡を手でつぶしたり 吹いたり…
その間に冬獅郎を洗ってやって すかさずオレも全身を洗う

シャワーで泡を流してしまうとちょっと残念そうに排水溝を見ている

『頭洗うぞ冬獅郎!』
『え!やだ!』

ここからが大変だ
泡が目に入るだの
しみるだのととにかくうるさい
シャワーを頭からかけてやった日には
この世の終わりみたいに喚きちらすから困ったもんだ

『ぎゅーって目つぶってれば大丈夫だからな?』
『…やだ』
『早くしないと来年になっちまうぞ?』
『…!』

観念したらしい 
ぎゅっと目を閉じて口も閉じて
なぜか両手もぎゅーっと握りしめている
可愛いことこの上ない

がしがし頭を洗ってやって

『冬獅郎まだ目開けんなよ?』
『…う』

抱き上げて横にしてやる
オレの膝に頭乗せて寝かせて
まぁ 美容院とおんなじだ コレならあんまし暴れない

『すぐおわっからな』
『ん』

顔にかからないように注意しながらシャワーをかけシャンプーを洗い流してやる
そのままお湯で薄めたリンスを冬獅郎の髪になじませて終わり

『終わったぞ』
『おわった?』
『もういーぞ』

目を開けた冬獅郎はまぶしくてしばらく目を細めていたけど
大嫌いな洗髪を終えたことで満足しているらしい
(やれやれ)

『オレ頭洗うから先入ってるか?』
『いちごとはいる』
『んじゃ おとなしくしてろよ』

一人で湯船に浸かるのはまだ怖いらしい

『おれシャワーかけてやる』
『え?あ?』

油断した
小さい冬獅郎がシャワーを向けてくると下からの角度になるので
オレの顔面ノというか鼻やら口やらにめちゃめちゃお湯が入ってきた

『おわっ!冬獅郎!もういいって!』
『まだあわついてる!』

今度は後ろに回られた

『きれいになったか?いちご』
『なった!なった!ありがと冬獅郎!』

あわててオレはシャワーのコックを閉めた

『あれ…でない』
『もう空っぽなんだよきっと』

不思議そうにシャワーのノズルの見つめている

『ほら入るぞー』
『おう』

まずオレが入り 冬獅郎を抱き上げていれてやる
湯船であぐらをかいたオレの膝の上に冬獅郎を乗せて

『ちゃんとあったまってな?こら肩までつかるんだ』

じっとしていられない子供はオレの膝の上に立ったり首によじ上ってきたりで
落ち着かない
滑って転んだり溺れたりしたことも何度もあるのに懲りない…
さすがはお子さまだ

しばらくあったまって着替えをさせて髪を乾かして
ふらふら冬獅郎が廊下へ出て行く
こたつにでも早く入りてえのかと思ってオレは洗濯物を集めていると

『いちご…』
『ん?どした?』
『あしつめてぇ』
『あ スリッパあっちか 抱っこしてやるから待ってろ』
『スリッパはく』
『わがまま言うなよ スリッパはリビングに置いてきただろ』

下を向いて拗ねはじめた
まったく……

ため息をつきつつスリッパを持ってきてやると
嬉しそうに履いて廊下をぱたぱた走り回っている

『風邪引くぞ!』
『ひかねー』
『じゃー ジュースやんね』
『やだ!』
『じゃ ほら』

手を差し出すと素直にオレの手を握ってきた

リビングに戻ると遊子が冬獅郎にカルピスを作っていてくれた

『こたつ!』

さっきあんだけ履きたがったスリッパをあっさり脱ぎ捨て
こたつに入ってカルピスを待っている
(…たまにかわいくねぇ…)

冬獅郎にカルピスを飲ませ
脱ぎ捨てられてあっちとそっちに飛んでったスリッパを集める

『冬獅郎!ちゃんとそろえて脱がなきゃだめだろ!』
『……』

聞こえないふりを覚えやがった
しゃーない…

オレはくるりと向きを変えて
リビングのテーブルで冷えたウーロン茶をすすり
何食わぬ顔で置いてあった新聞を読み出す

しばらくするとちらちら冬獅郎から視線を感じる

無視

今度はじっとオレを見ている気配

無視

そわそわしだしたのまで伝わってくる

笑い出したいのをこらえて無視

そのうち そっとこたつを抜け出して
おれが揃えてやったスリッパを上手に履いて
ぺたぺたとオレに近寄ってきた

『いちご…』

最後の無視

『…い…ちごぉ』

『ん?どーしかしたか』

白々しく答えてやると

冬獅郎はしゃがんで すわっているオレの足にぎゅーっとしがみついてきた

ちっちゃな声で

『ごめんなさい』

とんでもなく可愛い
すぐにでも抱き上げてほっぺにキスしたかったけど

『ちゃんとスリッパ揃えられるか?』
『うん』
『よし ちゃんと謝ったからな』

弾かれたように顔をあげる冬獅郎
オレが笑顔を向けてやると
あわてて立ち上がって
『いちごぉ』
っていいながら抱きついてきた
抱き上げて膝に乗っけてやるとオレのシャツをちっちゃい手でつかんで

『おこった?』

と上目使いで聞いてくる

『もう怒ってないって お前ちゃんと謝ったしな』

笑いかけてやると 安心したようにほっぺをオレの胸にすりつけてきた
頭をなでてやると気持ち良さそうに右と左のほっぺを交互にすりつけてくる

あーあほんっとに可愛いやつ

『冬獅郎 もーすぐ来年だからな?頑張って起きてような?』
『うん おれがんばる』

来年まであと少し…